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技術書典20出展レポート——毛糸のQRコードと、ブースで生まれた会話

技術書典20出展レポート——毛糸のQRコードと、ブースで生まれた会話
【読了時間:約10分 / 要約のみなら3分】

技術書典20に出展してきました。

池袋サンシャインシティ文化会館、け18のブースで出展させていただきました!

持っていったのは既刊2冊と、書き下ろし新刊に入れるはずだった編み物作品のサンプルたちです。

け18ブースの様子——QRコード編み作品とLINE BOT本が並ぶ

今回は新刊を落としてしまいました。

本来ならば「5つの技法でQRコードを編む本」を書き下ろすつもりだったのですが、執筆が間に合いませんでした。

そんな状態でも温かく迎えてくれた、スタッフの方、出展者やブースに遊びに来てくれた方々のおかげで、出展してよかった——そう思える1日でした。

編み物のサンプルは増えましたが、既刊での出展ということもあり、すごく賑わうブースというわけではありませんでした。そのぶん、お久しぶりの方とゆっくりお話できる、穏やかなイベントになりました!

この記事では、技術書典20当日の出来事と、そこでの印象に残った会話を記録しておきます。

📢 オンライン販売は4月26日(日)23:59で終了 します。実店舗のイベントは終わりましたが、オンラインでの頒布は継続中です。オンライン販売セクションへ


この記事で分かること(3行まとめ)

  • LINE BOT本が「応用のヒント」として受け取られた
  • 編み物サンプルに立ち止まってくれた人との会話から次回作への手応えが得られた
  • 隣のサークルさんと編み物を交換して帰ってきた

結論:ブースに立つと、アイデアが整理される

頒布数は書籍約20冊(電子+紙)+ハンドメイドのアクリルたわしが少し。

決して多くはないけれど、この数字以上に大切なものを持ち帰りました。

ブースに立ち止まってくれた方々との会話、隣のサークルさんとの編み物トーク、「次の本も楽しみにしてます」と言ってもらえた瞬間——。

技術書典は「本を売る場」である以上に、「同じ興味を持つ人が集まって話す場」 というのを改めて実感する機会になりました。

📚 オンライン販売中(4月26日で終了)


【準備編】新刊、落としました

今回、「5つの技法でQRコードを編む本」(仮タイトル)を書き下ろす予定でした。

棒針・かぎ針・アフガン・クロスステッチ・ミサンガ——5つの異なる技法で編んだQRコードが、それぞれスマートフォンで読み取れるかを検証し、編み図として公開する手芸本。

サンプルは揃っていたのに、書籍としての執筆が間に合いませんでした。

理由は、サンプルとして作ったQRコードが時間通りに作成できなかったことと、手芸本ということでAffinityを使ってデザインするのに手間取ったのが大きな理由です。

サンプルの作成については、実験も兼ねてでしたので、当初、マイクロQRという最小11 + クワイエットゾーン2セルの15セル四方のもので編もうと思ったんですが、

どうせなら手元のスマートフォンで読み取れる体験をして欲しい!

と通常のQRコード(クワイエットゾーンを含んで29セル四方)で編み始めたところ、担当していたプロジェクトのリリースタイミングも重なって、思ったように進みませんでした……

そして、どうせ編み図を起こすなら、好きなQRコードで編み図を起こせるようにアプリ化するか?!などと夢のようなことを考えていた時間も束の間、すぐ締め切りを迎えてしまいました。

正直、落とすかな……とはプロジェクトのリリース前のドタバタや進捗の進み具合で予想していたものの、やっぱり落としてしまって、少し落ち込みました。

既刊の「QRコードを編む」「推しキャラを召喚!LINE BOTで実現する日常」の(後者は技術書典では新刊)2冊はあるのと、時間を溶かした編み物サンプルたちはあるので、気を取り直して技術書典20への出展準備をすることに。

「頒布物がゼロになるわけじゃない」 と思い直して、当日を迎えました。

まだできていない新刊についての仕切り直し

今回、新刊を落としたことで、かえって冷静に企画を見直す時間ができました。

当初の「5技法を1冊に詰め込む」構想は、どの技法も中途半端になりかねない規模感でした。

そこで新刊は 2巻構成に再設計 することに。

  • Vol.1 入門編 — 棒針編み・かぎ針編み(多くの人が親しみやすい技法から)
  • Vol.2 応用編 — アフガン編み・クロスステッチ・ミサンガ編み(より踏み込んだ技法を深掘り)

1冊に詰めるより、技法ごとにじっくり向き合うほうが、読み手にも編み手にも誠実だと判断しました。

Vol.1 は 5月の文フリ東京42・技書博13での頒布を目指して準備中 です。

まだできていないので、ここでCMするのもドキドキなんですが、当日の頒布形態(完全版・縮小版・サンプル版)は、直前の進捗を見て @megusunuLab でお知らせします。


【当日編】け18ブースで起きたこと

LINE BOT本の「応用のヒント」が会話で

「推しキャラを召喚!LINE BOTで実現する日常」は、LINE Messaging API × Google Apps Script × Gemini AI の3つを組み合わせて、推しキャラと会話できるLINE BOTを 完全無料 で作る本です。

キャッチーな表紙の奥にあるのは、「AIキャラクターを、日常のチャットツールから呼び出す」という汎用的な設計です。

手に取ってくれた方と話していると、「このアーキテクチャ、LINEじゃなくてSlackやDiscordでも使えますよね?」 という会話に。

まさにそのとおりで、本書のアーキテクチャはシンプルです。

LINE BOT本のアーキテクチャ——LINEの部分を差し替えるだけでSlack・Discord・Teamsにも対応可能

Gemini AIとやりとりする部分(geminiAPI.gs)はそのまま使えて、プラットフォームごとのWebhook受信とメッセージ送信(replyMessage.gs)を書き換えるだけ。Slack・Discord・Teams・Microsoft Bot Frameworkにもメッセージプラットフォームを変更すると、応用が効く設計になっています。

他にも、「家族やグループ用のコミュニケーションBOTに応用したい」という相談がありました。本書の第3章〜第4章では、家族向けキャラクター(調停役・リマインダー役など)への応用も扱っていますし、その記録をスプレッドシートにも吐き出しているので、後からログとして解析することも可能です。

中には、ご家族に対して今日遊びに来た理由づけに買って行こうかな、という方も。

こういう読者のニーズを直接聞ける機会は、オフライン会場ならではですね!

📘 『推しキャラを召喚!LINE BOTで実現する日常』 — 技術書典20オンライン(〜4/26)

編み物サンプルに立ち止まってくれた人たち

新刊用に編んでおいたQRコードサンプル——棒針編み、かぎ針編み、アフガン編み、クロスステッチ、ミサンガ編みの5種類——をブースに並べていました。

「これ、毛糸ですよね?読み取れるんですか?」

何度も聞かれた質問です。そのたびにスマートフォンで実際に読み取ってみせると、驚いてもらえました。

特に反応が良かったのは:

  • リバース編みのネガポジ反転QR:表はネガポジ反転で編んでいるので、裏返すとミラー反転QRになっている。2006年のISO/IEC 18004(通称:QR Code 2005)以降の規格に対応したライブラリ(ほとんどのスマホが該当)で読み取れることを実演すると、「裏も読めるの!?」と驚いてもらえた
  • クロスステッチ(ビーズ編み)のQR:ストライプの編み地の上に小さなQRコード。少し変わった技法で編んだことに興味を持ってくれる方が多かった
  • アフガン編みのQR:「この細かさで読めるのすごい」

棒針編みのQRコードをスマートフォンで読み取っている様子——「THANK YOU AS ALWAYS」が検出されている

ちなみに、技法や編み図によって読み取りやすさはかなり変わります。

QRコードリーダーは、まず三隅の ファインダーパターン(あの大きな四角)を探します。このパターンは白黒が 1:1:3:1:1 の比率で並ぶように設計されていて、どの角度からスキャンしても「これはQRコードだ」と認識できる仕組みです。

今回編んだのはバージョン1(21×21セル)——QRコードの中で最も小さいバージョンです。セル数を少なくして編みやすくするためですが、バージョン1には歪みを補正する アライメントパターンが存在しません。つまり、ファインダーパターンの1:1:3:1:1の比率をいかに正確に再現できるかが、読み取れるかどうかの鍵になります。

糸の太さや目の密度、明暗のコントラストが技法ごとに異なるため、同じバージョン1でも読み取りやすさに差が出ます。

どの技法や編み図が読みやすく、どの技法が苦戦したか——そのあたりの検証結果は、次の新刊で詳しく書く予定です。

ビーズ編みとリバース編み(ネガポジ反転)——技法が違えばQRコードの質感も変わる アフガン編みのQRコード——細かい目で高密度に編んでいる

「本になったら欲しいです」と言ってもらえたのが、何よりのご褒美でした。

編み物を始めてみたいという人が声をかけてくださったのもあり、新刊を落としてしまったことへの後悔よりも、「新刊、だしたい!」という気持ち を強くもらいました。

なお、既刊「QRコードを編む」(技書博10)は、糸と針と時間を使ってQRコードを編み、スマホで読み取れるかを検証した本です。

アナログな「編み物」×デジタルな「QRコード」 という組み合わせで、QRコードの仕様を「理解」し、実際QRコードを編むことで認識率の高さを「体感」するアプローチの本です。

今回のサンプルたちは、この本の続編で、「実際に編んでみたい!」に答える位置づけです。

📗 『QRコードを編む』 — 技術書典20オンライン(〜4/26)

隣のサークルさんと編み物を交換しました

割とまったりとした接客だったのと、QRコードのサンプルに興味を持っていただいた、隣のサークルさんとちらっと話す機会がありました。そこから編み物トークに展開。

技術書典で「編み物」の話で盛り上がれるとは思っていませんでした。

また、閉会間際、お互いの編んだ小物を交換しました。

本の交換でなく編み物の交換を即売会——なんだか不思議な気持ちになりました。

同人誌即売会って、こういう即興的な「やり取り」が自然に起きる場所なんだな、と改めて思いました。


【深掘り】技術書典という「場」の面白さ

技術書典は、本来「技術書の即売会」です。でも、当日会場にいて感じたのは、それだけじゃない何かでした。

オンラインでは起きないこと

一般の書店で技術書を買うとき、書き手と買い手が顔を合わせることはありません。

最近は、SNSなどでレビューで反応してくれる著者さんもいらっしゃいますが、通常はレビューの星の数と文章の一方向だけです。

オフラインでの技術書店では、本を書いた当人が目の前に立っていて、その場で質問できる

これは大きな強みで、「この本、どんな人向けですか?」「この技術を学ぶ前提知識は?」「XXXで困っているんです」と聞いたら、著者本人から答えが返ってきます。

本を書いている側も、(時間が許すかぎり)双方向のやり取りをもとめている方が多く、親切に答えてくれますし、一人では気づかないフィードバックを得ることができ、次の活動のヒントになります。

「売る・買う」より「共鳴する」

ブースに立ち止まる人は、何らかの形でそのテーマに興味がある人がほとんどです。

本を買わなくても、「編み物でQRコードって面白いですね」と言い残して去っていく人がたくさんいました。

その一言一言が、次の作品を作るモチベーションになります。

技術書典は 「興味の交差点」 なのかもしれません。

同じテーマに関心を持つ人が、それぞれ違うバックグラウンドを持って集まっているので、

「そういう考え方もあったか!」

というような体験が、普通の生活では起こらない頻度で起きています。買い手もフィードバックをすることで制作側に関われたような感覚を持っていただける場なんだと思います。

面白いと思ったものは、積極的に返すと制作意欲も湧くので、ぜひ(購入してもらえるとさらに良いけど)声をかけてください!


【制作中】本と並行して届ける、2つのプロダクト

Vol.1 の執筆と並行して、読者にもっと楽しんでもらえる2つのプロダクトも準備中です。

🌐 QRコード編み図ジェネレーター(Web・無料公開予定)

URLや文字を入力するだけで、棒針編み・かぎ針編みの編み図が自動生成できる Webツール を作成中です。

「QRコードを編む」という同人誌本を通じて、どうやって編むんですか?編み図はどうしているんですか?と聞かれます。

「QRコード自体が編み図なんですよ」と返しても、「QRコードを印刷してから編み図に起こしてるんですね!なるほどー」という反応が多く、そんな高尚なものでもないんだけどな、と思っていました。

が、おそらく編み図がないとどうやって編めるかの完成図がわからない、編み物をしたことがない人には「柴崎現象」のようなことが起こっているのかも???

※水彩画家の柴崎春通さんのYouTubeで、途中までは何を描いているかわからないのに、最後に突然写実画が現れるアレです。QRコードの白黒パターンから編み図(設計図)なしに、編み物の完成形がどうできるかが想像できないのと似ているかもしれません。

正直、編み物をしたことある人には「柴崎現象」というほど高尚なものではないのですが…

このやりとりの”ずれ”から編み図(設計図)がないと変換できないのでは?と思うに至りました。

少しでも、私のQRコードの編み物サンプルを見て「編んでみたい!」と思った人が、ハードルなく始められる入口となればいいな、と思い好きなQRコードを編み図にできるツールを作ろうと思い至りました。

まだ、作成完了の目処は見えないのですが、完成・公開のお知らせは @megusunuLab で行いますので、気長に待っていただけると嬉しいです!

📱 マイクロQR対応 読み取り&コレクションアプリ(制作中)

編んだQRコードを読み取って、自分の作品コレクションとして残せるアプリも作っています。通常のQRコードに加えて、マイクロQRコード にも対応予定です。

マイクロQRは、通常のQRより小さいセル数で文字情報を格納できる規格で、QRコードのような文字数を保持できないのもあり(URLとかの保持には向かない)、対応アプリがまだ少ない領域です。「編んだマイクロQRを手軽に読みたい」「業務でマイクロQRを扱いたい」といった需要に応えられたらと思っています。

こちらも、リリース情報は @megusunuLab で順次お知らせします。


【次回のお知らせ】5月は2つのイベントに出展します

今回の新刊「QRコードを編む Vol.1 入門編」は、次の2つのイベントでの頒布を目指して準備中です。

当日のブースでは、Vol.2 で扱う予定の残り3技法(アフガン・クロスステッチ・ミサンガ)のサンプルも手に取れるように並べる予定です。スマホでの読み取り体験もぜひ!

文学フリマ東京42

技術書同人誌博覧会 第13回(技書博13)

  • 日時:5月10日(日)11:00〜16:00
  • 会場:大田区産業プラザPiO
  • イベントページhttps://gishohaku.dev/

📚 技術書典20オンライン販売は4月26日で終了

技術書典20のオンライン販売は 2026年4月26日(日)23:59 で終了 します。実店舗で当日来られなかった方も、この機会にぜひチェックしてもらえると嬉しいです。

サークル「megusunuLab」@技術書典20オンライン


読んでくださった方へ

最後まで読んでくださってありがとうございました。

もし、ほんの少しでも「手を動かしてみたい」「現物を見てみたい」と思ってもらえたら、こんな入り口もあります。

  • 技術書典20オンライン販売 — 既刊『QRコードを編む』『推しキャラを召喚!LINE BOTで実現する日常』を電子/紙で頒布中。サークル「megusunuLab」(〜4月26日)
  • 文学フリマ東京42(5月4日)・技書博13(5月10日) — 編み物サンプルを実際に手に取れます。Vol.1 の準備状況に応じて、完成版・サンプル版のいずれかを頒布予定です
  • @megusunuLab — 新刊や Webツール、アプリの進捗はこちらで

ブースで直接話せるのが一番うれしいですので、通りかかったら気軽に声をかけてください。


まとめ:数字だけじゃない価値

技術書典20では、約20冊の頒布と、少しのハンドメイドの頒布をさせてもらいました。

数字だけ見れば「控えめな出展」かもしれません。そこで生まれた会話と、受け取ったフィードバックと、交換した編み物——それらは数字には現れない大きな価値でした。

新刊を落としたことは残念でしたが、落としたからこそ見えたもの もありました。既刊2冊がどう受け取られているか、サンプルにどんな反応があるか、次に何を作るべきか——。

次のイベントでも、予想外の出会いがきっとあるはず!

そう思えるようになったのが、今回の一番の収穫でした。

当日、お話しさせていただいた方々、ありがとうございました。 また、無事、技術書典20のオフラインイベントを終えられたのはスタッフの方のおかげです。ありがとうございました。


よくある質問

Q: 新刊を落としても技術書典に出展する意味はありますか?

あります。既刊があれば頒布物はあるし、何より「ブースに立って会話する」こと自体に価値があります。読者のニーズを直接聞けたり、他サークルさんと交流できたり、新刊がなくても得られるものはたくさんあります。

Q: 技術書典でハンドメイドグッズも売れますか?

私の場合、アクリルたわしを少し販売できました。技術書典の来場者は「ものづくり」に関心が高い層が多いので、技術書と親和性のあるハンドメイド品(編み物・3Dプリント品など)は意外と反応があります。ただし中心はあくまで技術書です!

Q: 技術書典は何人くらいで出展するのがおすすめですか?

最低2人体制を推奨する記事が多いです。1人だと席を立てずトイレや休憩が難しい、昼食を取るタイミングも限られます。ただ1人でも出展自体は可能で、私も1人で出展しました。隣のサークルさんと協力し合うこともあります。

Q: Vol.1 は確実に5月のイベントで頒布されますか?

完全版での頒布を目指して準備中ですが、進捗によっては縮小版・サンプル版での対応になる可能性もあります。頒布形態の確定情報は、イベント直前に @megusunuLab でお知らせします。いずれの形でもブースでの体験自体は用意する予定です。


参考情報

関連イベント・販売サイト

QRコード関連の記事(深掘りラボ)

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