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世界のバレンタインはなぜこんなに違うのか?——ベトナムのMAROUチョコから深掘り

世界のバレンタインはなぜこんなに違うのか?——ベトナムのMAROUチョコから深掘り
【読了時間:約20分 / 要約のみなら3分】

この記事で分かること(3行まとめ)

  • ベトナムの高級チョコMAROUは、フランス人2人がジャングルでのサバイバルトレックで出会って生まれたBean-to-Barブランド
  • バレンタインに「女性→男性」が定着しているのは日本と韓国だけ——世界では「男性→女性」が主流
  • 贈る側の違いを生んだ要因は、文化や宗教ではなく意外なところにあった

2026年1月、ベトナム・ハノイを訪れたとき、1つのチョコレートに目が止まりました。

「Happy Valentine’s Day」と書かれた、白地に大きな赤いハートが描かれたボックス。水色のリボンが掛かり、ピンクと紫の小さなハートが散りばめられたポップなデザイン。中にはダークチョコレート65%のカシュー&ストロベリーのチョコレートが入っています。

MAROUのHappy Valentineパッケージ

MAISON MAROU(メゾン・マルゥ)——ベトナム発のBean-to-Barチョコレートブランドです。

面白かったのは、隣の棚に「Happy New Year」パッケージが並んでいたこと。1月のベトナムは旧正月「テト(Tết Nguyên Đán)」の直前——日本でいうお正月にあたる、ベトナム最大の祝日です。テトの贈り物とバレンタインの贈り物が、同じ空間に自然に共存していました。(午年を祝うパッケージのチョコレートもありました)

ベトナムでもバレンタインにチョコを贈るんだ。ちょっと高いけど、かわいい!!

——そんな素朴な発見から、「バレンタインを祝う文化って、世界ではどうなってるんだろう?」と気になり始めました。

調べてみたら、面白い話がいくつか出てきました。このチョコレートの背景には、フランス植民地時代の歴史があり、世界各国のバレンタイン文化の違いがあり、さらには2024年のカカオ価格高騰の話まで繋がっていました。

ベトナムで買った1枚のチョコから、世界のバレンタインを深掘りしてみます。


結論:日本の「女性→男性」は世界では少数派

先に結論をまとめます。

世界のバレンタインで「誰が誰に贈るか」は、国によってはっきり分かれています。

国・地域贈る側定番ギフト
アメリカ・ヨーロッパ男性→女性花・カード・ジュエリー・ディナー
日本女性→男性チョコレート(本命・義理・友チョコ)
韓国女性→男性チョコレート(日本式)
ベトナム・中国・タイ男性→女性バラ・チョコレート・ぬいぐるみ

世界のほとんどの国で「男性→女性」が基本。「女性→男性」が定着しているのは日本と韓国だけで、世界的にはかなり珍しい形です。

もう一つの違いは、日本では「バレンタイン=チョコ」ですが、欧米ではチョコは選択肢の一つに過ぎず、花やジュエリー、ディナーのほうが市場規模が大きいことです。

なぜこうした違いが生まれたのかは、後半の深掘り編で詳しく分析します。


【ブランド】MAISON MAROUという存在

ジャングルのサバイバルトレックで生まれたチョコレート

MAROUの創業は2011年、ホーチミン市。創業者はフランス人2人です。

  • サミュエル・マルタ(Samuel Maruta):パリ政治学院卒。フランスの大手銀行で約10年間、日本・イギリス・シンガポール・香港と転々とした後、「自分の名前を付けられるほど誇れるものを作りたい」とベトナムへ
  • ヴァンサン・ムルー(Vincent Mourou):サンフランシスコで映画・広告業界のキャリアを築いた後、人生を見つめ直す旅でベトナムへ

2人の出会い方が面白い。2010年、元フランス外人部隊の兵士が率いる週末のジャングルサバイバルトレックで偶然出会い、意気投合(Desire Paths)。その後「cacao plantation」とGoogleで検索してバリア省の農園を発見し、フェリーでサイゴンに戻る途中で「チョコレート作ろう」と決めたそうです(Vietcetera)。

最初の製造場所はサミュエルのキッチン。ブレンダーとオーブンとケーキ型だけで作り始めました。

なお、サミュエルは2021年1月にフランスで46歳の若さで逝去しています。現在はヴァンサンとベトナム人パートナーのタオ・グエン(Thao Nguyen)がMAROUを率いており、彼の名を冠したブランドは今もベトナムのカカオ文化を世界に発信し続けています。

ブランド名「MAROU」は、2人の名字 Maruta + Morou を組み合わせた造語。「Faiseurs de Chocolat(チョコレートを作る人たち)」というフランス語の副題がつきます。

Bean-to-Barとは何か

MAROUの最大の特徴はBean-to-Bar——カカオ豆の調達から最終製品まで、全工程を自社で管理する方式です。

Bean-to-Bar大量生産チョコ
原料カカオ豆から自社で加工既製のカカオマスを溶かして使用
産地ごとの個性(テロワール)均一な味になるようブレンド
農家との関係直接取引(ダイレクトトレード)多層的な仲介業者を経由

MAROUはベトナム国内7つの省からカカオ豆を調達し、産地ごとに異なるバーを作っています。ベンチェ78%、バリア76%、ラムドン74%……といった具合に、パッケージの色もカカオの産地に対応しています。

しかもMAROUは、カカオの産地で直接チョコレートを製造するという世界でも数少ない「オリジンメーカー」。農園から工場が近いので、新鮮な豆を最適なタイミングで加工できます。500以上のカカオ農家と直接取引し、公正な価格での買い取りを実践しています(Mekong Capital)。

パッケージデザインの秘密

MAROUのパッケージを見ると、「フランスとベトナムの融合」を視覚的に感じます。

デザインを担当したのはホーチミンのデザインスタジオ「Rice Creative」。インスピレーションの源は、サイゴンの旧中華街「チョロン」の職人印刷工房で作られる儀式用の手刷り紙。伝統的な格子模様に、カカオの実や花のイラストが描かれ、アンティークゴールドのインクでシルクスクリーン印刷されています。

フランスのモダンなデザインセンスと、ベトナムの伝統的な手工芸が1枚のパッケージに共存しています。この「融合」がMAROUのブランドそのものです。

なぜベトナムでフランス風の高級チョコが成功したのか

ここには歴史的な背景があります。

ベトナムは1887年〜1954年までフランス領インドシナでした。フランスは1870年代にカカオの木をベトナムに持ち込み、ベンチェ省のカトリック神父ジェルノ(Gernot)が初めて栽培を試みた記録が残っています(VOA News)。ただし、この試みは失敗に終わり、1907年のフランス政府令でカカオ事業への補助金は打ち切られました(Marou Tumblr)。

その後、戦争を経て農園はほぼ消滅しました。ベトナムのカカオが「再発見」されたのは2000年代に入ってからです。USAIDなどの国際支援で農家への技術指導が行われ、そこにMAROUが2011年に登場しました。

つまりフランスが植えたカカオの種を、100年以上後にフランス人が再び花開かせた——そんな歴史の円環を感じるストーリーです。

日本で買えるMAROU

販売チャネル価格目安
日本公式オンラインストア80gバー 約1,782円
サロン・デュ・ショコラ東京(伊勢丹新宿)イベント限定
阪急うめだ本店バレンタインフェアイベント限定
Amazon Japan80g 6枚セット等

ベトナム現地では80gバーが約840〜1,200円。日本では約1.5〜2倍ですが、それでも「国際的に評価されたシングルオリジン(単一産地のカカオのみを使用したチョコレート)」としては妥当な価格です。フランスの「Club des Croqueurs de Chocolat」で金のタブレット賞、ニューヨーク・タイムズで「最高のチョコレート」と評されたこともあります。


【ベトナム】テトとバレンタインが共存する国

ベトナムにバレンタインが来た日

ベトナムでバレンタインが祝われるようになったのは1990年代。ドイモイ(刷新)政策で経済・文化が開放された時期です(VL Studies)。最初はハノイとホーチミンの都市部の若者だけの話でしたが、今では全国に広がっています。

ベトナムのバレンタインは欧米式で、男性から女性に贈るのが基本。贈り物の内訳はこんな感じです。

贈り物割合
赤いバラ51%
チョコレート・キャンディ22%
ぬいぐるみその他
パーソナライズドギフトその他

Statista(2024)の調査によると、ベトナム人の約4割がバレンタインギフトを購入するとされています。チョコレートのギフトが多い日本とは贈り物のラインナップが違いますね。

テト(旧正月)との奇妙な共存

ここが面白いところ。

ベトナムの旧正月「テト」は毎年日付が変わりますが、1月下旬〜2月中旬になることが多いです。つまりバレンタイン(2月14日)とテトが時期的にかぶることがあります。

2026年のテトは2月17日で、バレンタインのわずか3日後。私がハノイを訪れた1月中旬は、テトの約1ヶ月前でしたが、すでに準備が始まっている時期でした。MAROUの店舗には「Happy New Year」のテト向けギフトセット(スプリングハンパー、約170万ドン=約1万円)と、「Happy Valentine」パッケージが並んで売られていました。

同じ時期にハノイを訪れた方の投稿にも、「HAPPY NEW 2026」パッケージがずらりと並ぶ様子が写っています。

komiharu_official(@komiharu_official)がシェアした投稿

出典:@komiharu_official — Hanoi, Vietnam(2026年1月25日投稿)

お祝いムードが重なるこの時期、MAROUのようなブランドにとっては「テトの贈答+バレンタインの贈答」で二重の需要が見込めるのかもしれません。

フランスの影響はカカオだけじゃない

ベトナムでフランス風の高級チョコが自然に受け入れられる土壌には、植民地時代の名残があります。

バインミー(フランスパンのサンドイッチ)、ベトナムコーヒー(フレンチドリップ)、フォー(フランス料理の影響を受けたとされるスープ)——ベトナムの食文化にはフランスの痕跡が色濃く残っています。MAROUが成功した理由のひとつは、ベトナムの人々にとって「フランス的なもの」が日常の延長線上にあることでしょう。


【比較】世界のバレンタイン——贈る側はなぜ違うのか

日本:チョコレート一択の独自文化

日本のバレンタインの起源は、少なくとも3つの会社が「自分が最初だ」と主張していて、諸説あります。

会社何をしたか
1936年モロゾフ神戸の英字新聞にバレンタインチョコの広告を掲載(モロゾフ公式
1958年メリーチョコレート伊勢丹新宿でバレンタインセールを実施(Wikipedia)。3日間の売上はわずか170円だった(メリー公式
1960年森永製菓新聞広告でバレンタインチョコのギフトを全国的にキャンペーン

1950年代末〜60年代にかけて複数の製菓会社がキャンペーンを展開し、バレンタインは徐々に日本に定着していきました。

義理チョコの興亡

1970年代以降、バレンタインチョコは「義理チョコ」として職場の社交儀礼に拡大。しかし近年、転機が来ています。

2018年、ベルギーのチョコレートブランドゴディバが日本経済新聞に全面広告を出し、「義理チョコ、やめよう」と呼びかけて話題になりました(Japan Times)。

一方、ブラックサンダーのメーカー有楽製菓は「義理チョコ文化は人それぞれ」と反論。日本のバレンタインは、いまだに揺れています。

チョコの分類が独特すぎる

日本のバレンタインチョコには独自の分類体系があります。

種類意味備考
本命チョコ恋愛感情のある相手に3,000〜6,000円が相場
義理チョコ職場・知人への社交500〜1,000円が相場
友チョコ女友達同士で交換若年層に人気
自分チョコ自分へのご褒美急増中
逆チョコ男性→女性(逆転)新しい動き
推しチョコ推しのキャラ・アイドルをイメージ新トレンド

2025年のロッテの調査では、10代の45%がチョコを渡したい相手に「自分」を挙げているロッテ調査)。「恋愛のための行事」から「自分を楽しむ行事」へ、バレンタインの意味が変わりつつあります。

帝国データバンクの調査によると、バレンタインチョコの平均単価は年々上昇を続けており、カカオ価格高騰の影響が出ています(帝国データバンク)。

欧米:聖ヴァレンティヌスと1,000年の歴史

欧米のバレンタインは男性から女性に贈るのが基本。起源は3世紀のローマに遡ります。

キリスト教の聖人ヴァレンティヌスが、婚姻を禁じたクラウディウス2世の命に背いて兵士たちの結婚式を執り行い、処刑された——という伝説(Britannica)。ただし、これに恋愛的な意味を付与したのは14世紀のジェフリー・チョーサー(『カンタベリー物語』の著者)が最初とされています。最初のバレンタインカードは、1415年にオルレアン公がロンドン塔から妻に送った手紙でした。

現在のアメリカのバレンタイン市場は約291億ドル(約4.4兆円、2026年予測)。1人あたりの平均支出は約200ドル(NRF)。

ギフト購入率市場規模
キャンディ56%約26億ドル
41%約31億ドル
グリーティングカード41%約14億ドル
ディナー39%約63億ドル
ジュエリー25%約70億ドル

注目すべきは、チョコレートは選択肢の一つに過ぎないこと。日本では「バレンタイン=チョコ」ですが、欧米では花やジュエリー、ディナーのほうが市場規模が大きいです。バレンタインの「チョコレート一択」は、実は日本のかなり特殊な現象です。

ちなみに、バレンタイン用のハート型チョコレートボックスを発明したのは、1861年のイギリスのリチャード・キャドバリー。チョコを食べ終わった後も箱を記念品として保管できるようにデザインした——これもまたマーケティングの物語です。

韓国:毎月14日がイベントになった国

韓国のバレンタインは日本と同じ「女性→男性」。1980年代に日本から輸入されました。儒教文化の共通点があったため、日本式がそのまま定着。

さらに韓国では、3ヶ月連続のイベントシリーズに発展しています。

日付イベント内容
2月14日バレンタインデー女性→男性にチョコ
3月14日ホワイトデー男性→女性にお返し(2〜3倍の価値)
4月14日ブラックデー何ももらえなかった人がジャジャン麺を食べる

ホワイトデー(3月14日)は日本発祥で、1970年代末に始まりました。韓国にもそのまま輸入されています。

そしてブラックデー。バレンタインでもホワイトデーでも何ももらえなかった人が、4月14日に黒いジャジャン麺(チャジャンミョン)を食べて連帯する——というユーモラスなイベント。「シングルにも居場所を」という発想が興味深いですね。

実は韓国では毎月14日に何かしらの恋愛イベントがあります(Korea.net)。5月のローズデー、6月のキスデー、7月のシルバーデー……と12月のハグデーまで続きます。K-POPの恋愛観と商業的なチャンスが結びついた結果かもしれません。

中国:バレンタインが3回ある

中国には「バレンタイン的なイベント」が3つあります。

イベント時期特徴
西洋のバレンタイン2月14日男性→女性。都市部の若者中心
520の日5月20日「520(ウーアーリン)」が「我愛你(ウォーアイニー)」に似ている
七夕(チーシー)旧暦7月7日牛郎と織女の伝説。2,000年以上の歴史

面白いのは「520の日」。数字の発音が「I love you」に聞こえるというインターネット発の記念日で、5月20日は男性が愛を伝え、翌日の5月21日は女性がお返しするのだそう。

若い世代は3つとも祝う傾向があり、中国のカップルは年に3回バレンタインを経験することになります。

その他の国

  • 台湾:2月14日と七夕の両方を祝う。男性→女性が基本
  • タイ:男性→女性。バンコクではバレンタインに合わせたユニークな結婚式イベントが開かれることも
  • フィリピン:バレンタインに集団結婚式を開催する慣習があり、数百〜数千組のカップルが一斉に結婚届を出すことで知られている

【深掘り】「贈る側」の違いを生んだ3つの要因

【時間がない方へ】 ここまでで世界各国のバレンタイン事情がわかります。ここからは、なぜ国によって「贈る側」が分かれたのか——その3つの要因を深掘りしていきます。要点だけ知りたい方は「まとめ」へどうぞ。

要因1:「誰が持ち込んだか」がすべてを決めた

最大の要因は、バレンタインを国内に普及させたのが誰か

  • 欧米:中世の求愛文化から自然発生。「男性が女性に求愛する」伝統がそのまま
  • 日本:1958年にメリーチョコレートが伊勢丹でバレンタインセールを始めたものの、3日間の売上はわずか170円。翌1959年、ハート型チョコを作り**「女性から男性へ」**という訴求を打ち出した。これは既存の男性→女性のギフト機会(クリスマス等)と競合しないよう、あえて方向を逆転させた戦略的判断だった可能性が高い
  • 韓国:1980年代に日本からそのまま輸入
  • ベトナム・中国・タイ:1990年代以降、西洋メディア経由で直接流入。「男性→女性」がそのまま定着

つまり「文化の入口」が贈る方向を決めています。日本の製菓業界がマーケティングで方向を反転させたことが、東アジアの一部にだけ「女性→男性」を生んだわけです。

要因2:儒教文化が「例外の日」を作った

日本と韓国で「女性→男性」が受け入れられた背景には、儒教的な社会構造があります。

当時の日本では、女性が男性に直接好意を伝えるのはタブーに近かった。バレンタインは「年に一度の例外」として機能し、制約そのものがマーケティングのフックになりました。制約がなければ、わざわざ「特別な日」を設定する意味もなかったでしょう。

中国も儒教文化圏ですが、バレンタインが入ってきたのは1990年代以降。すでにグローバル化が進んだ時期だったため、西洋メディアの「男性→女性」がそのまま定着しています。

要因3:「お返し」の制度化という発明

日本発のもう一つの文化がホワイトデー。その起源には複数の説があります。1978年に福岡の老舗菓子店・石村萬盛堂が「マシュマロデー」として始めた説と、同年に全国飴菓子工業協同組合が独自に「ホワイトデー」を制定した説が並存しています(Wikipedia)。

バレンタインで「女性→男性」の流れを作り、ホワイトデーで「男性→女性」の返礼を制度化しました。しかも暗黙のルールとして「もらった額の2〜3倍」をお返しします。

1つの行事を2つに分割し、両方で製菓業界が売上を立てる——経済的にもよくできた設計です。このシステムは韓国に輸出され、さらにブラックデーという派生まで生まれました。

現在の潮流:方向性の溶解

ただし、世界的に「贈る方向」は溶解しつつあります。

  • 日本:「逆チョコ」「友チョコ」「自分チョコ」の台頭
  • アメリカ:女性のギフト購入額が男性に迫りつつある。友人への購入(33%)やペットへの購入(35%)が過去最高
  • 全世界:「自分へのご褒美」としてのバレンタイン消費が拡大

元々の「誰が誰に」という方向性は、若い世代を中心にどんどん曖昧になっています。バレンタインは「特定の人に贈る日」から「みんなで楽しむ日」へ変わりつつあるようです。


【補足】チョコレート価格高騰の裏側

最後に、バレンタインに直結する話を一つ。

2024年、カカオ豆の国際価格が前年比で約2〜3倍に高騰しました(Wikipedia)。

時期カカオ価格(1トンあたり)
2023年平均約3,182ドル
2024年4月(ピーク時)約12,567ドル
2024年12月約13,000ドル

原因は気候変動。世界のカカオの約60%を生産する西アフリカのガーナとコートジボワールで、2023年の豪雨とその後の深刻な乾燥が重なり、収穫量が激減。ガーナの生産量は通常の半分以下にまで落ち込みました。さらにブラックポッド病などの病害も追い打ちをかけています(CNBC)。

日本でもバレンタインチョコの平均単価は年々上昇しており、過去最高を更新し続けています。

MAROUのようなBean-to-Barブランドは、シングルオリジンの高品質カカオに依存しているため、価格高騰の影響は避けられません。ただし、もともとプレミアム価格帯で利幅があることと、ベトナム産カカオは西アフリカとは供給ルートが異なるため、大量生産チョコほどの直撃は受けていないという見方もあります。

カカオ価格と気候変動の話は、それだけで1本の記事が書けるテーマ。詳しくは別の機会に深掘りしたいと思ってます。


まとめ:バレンタインは「共通の記号、異なる意味」

ベトナムで買った1枚のMAROUチョコから、思った以上に遠くまで来ました。

  • MAROUは、フランス人2人がベトナムのジャングルで出会い、フランスの美意識とベトナムのカカオを融合させたブランド。パッケージの1枚1枚に、植民地時代から続く文化の交差点がある

  • バレンタインの「贈る側」 は、文化やジェンダーではなく「誰がその国にバレンタインを持ち込んだか」で決まった。日本と韓国の「女性→男性」は世界的には少数派

  • 2024年のカカオ価格高騰で、チョコレートの価格は世界的に上昇中。気候変動がバレンタインの風景を変えつつある

バレンタインという行事は世界中にあるけれど、その中身は、国によってはっきり分かれている。「2月14日にチョコを贈る」という行為の裏にある文化的文脈を知ると、1枚のチョコレートの見え方が少し変わるかもしれません。

あなたの国の、あなたの街のバレンタインは、どんな形ですか?


よくある質問

MAROUチョコレートはどこで買える?

日本公式オンラインストアのほか、サロン・デュ・ショコラ東京(伊勢丹新宿)や阪急うめだ本店のバレンタインフェアなどで購入できます。80gバーで約1,782円(税込)。

バレンタインに女性から男性に贈るのは日本だけ?

ほぼ日本と韓国だけです。世界の大多数の国では男性から女性に贈るのが一般的です。

Bean-to-Barチョコは普通のチョコと何が違う?

カカオ豆の選別から最終製品まで一貫して自社管理しているため、産地ごとの風味(テロワール)を楽しめます。ワインの「シングルヴィンヤード」に近い考え方です。


参考情報

関連書籍

参考URL

MAISON MAROU公式

バレンタイン文化・歴史

韓国のバレンタイン

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カカオ価格

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