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200円のチョコのうち、農家に届くのは14円——カカオ価格が2年で5倍になった話

200円のチョコのうち、農家に届くのは14円——カカオ価格が2年で5倍になった話
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この記事で分かること(3行まとめ)

  • 200円のチョコレートのうち、カカオ農家に届くのは約14円(約7%) ——1980年代の半分以下
  • カカオ先物価格は2年で約5倍に高騰し、その後約70%暴落——でもチョコの小売価格は過去最高
  • 高騰しても暴落しても、一番つらいのは現場のカカオ農家

最近、チョコレートが高くなったなぁと思いませんか。

私は、コンビニでよくやっている「対象商品3つ購入でXXのクリアファイルプレゼント!」のキャンペーンで、チョコレート商品を選ぶことが多いのですが、

あれ?こんなに高かった?!

レジでキャンペーンのたびに感じています(一度でなく、何度も)。

先日、ベトナムのチョコレートブランドMAROUの記事を書いたとき、「カカオ価格が高騰している」話に触れたのもあり、 気になって調べ始めたら、実感や想像以上にチョコレートの値段がすごいことになっていました。

しかしながら、今回調べてみて一番驚いたのは価格高騰の話ではなく、チョコ1枚の値段の内訳 ——そして農家の取り分が40年で半分以下になっていた事実でした。


結論:200円のチョコ、農家に届くのは約14円

先に結論を。

2025年現在、大手メーカーの板チョコは1枚約200円 になりました。

この200円はどう分配されているのか?

これについては、 FAO(国連食糧農業機関)とBASICの共同研究(2020年)が、欧州のチョコレートの価値分配で調べています(出典)。

誰が受け取る?200円のうち割合出典
ブランド・小売・流通約140円約70%FAO/BASIC(2020年)
カカオ取引・加工・輸送約46円約23%FAO/BASIC(2020年)
カカオ農家約14円約7%FAO/BASIC(ミルクチョコ)

※FAO/BASIC研究は欧州市場のデータ。日本市場の正確な内訳は非公開ですが、構造は同様です。農家の取り分はソースにより6〜7%(Make Chocolate Fair、WEF/Fairtrade等)と報告されています。

14円

西アフリカの農家が、カカオの木を育てて、実を収穫して、発酵させて、乾燥させて——200円のチョコのうち、その対価が14円しかないのです。

ブランドと小売が全体の約70%(約140円)を受け取り、農家は約7%。しかも、1980年代には農家の取り分は12〜16% ありました(UNCTAD, 2015年Oxfam)。

同じ200円に当てはめると24〜32円届いていた計算で、割合は40年で半分以下に縮小しています。

つまり、チョコの値段が倍になっても、農家に入る金額は変わらない——。

なぜそんなことになるのでしょうか?今回は、チョコ1枚の旅と称して、私たちの手元にチョコレートが届くまでを追ってみます。


【基礎】チョコ1枚の旅——農園から手元に届くまで

カカオ農園(西アフリカ)

チョコ1枚の旅は、赤道付近の農園から始まります。

チョコレートの原材料となるカカオ豆の生産は、特定の地域に極端に集中しています。

世界シェア(2022/23年)
コートジボワール約40%
ガーナ約12%
その他アフリカ約22%
アジア(インドネシア等)約15%
中南米約11%

コートジボワールとガーナの2カ国だけでカカオ 60%以上ICCO)を占めます。この「2カ国依存」が、今回の乱高下の伏線です。

ここからは、農園を出たカカオ豆があなたの手元に届くまでの流れを追ってみます。

買い付け・一次加工

農家が収穫したカカオ豆は、現地の買い付け業者 が集荷し、輸出業者を経て産地を離れます。

ここで重要なのが一次加工(グラインディング)です。カカオ豆をロースト → 粉砕して、カカオマスカカオバター に分離する工程です。

この一次加工はBarry CallebautやCargillなどの大手グラインダーが担っていて、産地国または消費国の工場で行われます。お手元にチョコレートがあれば、「原材料」をみてみてください。内訳は、カカオ豆ではなく、このカカオマスとカカオバターになっていると思います。

※カカオマス・カカオバターにするための一次加工はかなりの設備投資と技術が必要となります。

先物市場

一次加工を経たカカオ製品は、ニューヨークやロンドンの先物市場(ICE) で取引されます。

チョコレートメーカーは、この先物市場で将来の仕入れ価格を「予約」(ヘッジ)して取引価格を決定します。ここに投機マネーも流れ込んでいて、メーカーとヘッジファンドが同じ市場で綱引きをしています。

ここまでが23%(46円)

内訳の23%(46円)は、買い付け・一次加工・国際輸送・先物取引のマージンをすべて含んでいます。カカオ豆をチョコの原材料に変える工程なので、コストがかかるのは当然ですが、先物の乱高下に直接さらされる部分でもあります。

メーカー → 小売 → あなた

メーカーはカカオマス・カカオバターを仕入れ、砂糖や乳原料と混合 → チョコレートに成形 → 包装。小売店に並んで、あなたの手元に届きます。

14円の農家から、140円のメーカー・小売まで ——旅の途中で値段がどんどん膨らんでいく構造です。

チョコレートのサプライチェーンとお金の流れ。農家→買い付け→先物市場→メーカー→小売の各段階で、お金の配分が大きく変わる FAO/BASIC共同研究(2020年)の情報をグラフ化


【基礎】そこに激震が走った——2年で5倍

このサプライチェーンに激震が走ったのが、2023〜2024年です。安定していたカカオの先物取引価格が高騰しました。

時期カカオ先物価格(1トンあたり)
2018〜2022年2,000〜3,000ドル(安定期)
2024年4月約11,700ドル(最初のピーク)
2024年12月約12,931ドル(史上最高値)
2026年2月約3,700〜4,000ドル(暴落後)

2年で約5倍に高騰し、その後約70%の暴落

カカオ先物価格の推移。2018〜2022年の安定期(2,000〜3,000ドル)から、2024年12月に史上最高値約12,931ドルを記録し、2026年2月には約3,700〜4,000ドルまで下落

なぜこんなことが起きたのでしょうか?

そして、先物取引価格の乱高下がチョコレートの消費価格の高騰に直接つながったのでしょうか?

【時間がない方へ】 ここまでで価格高騰の全体像がわかります。ここからは、なぜ5倍になったのか、そして農家の取り分がなぜ変わらないのか を深掘りしていきます。要点だけ知りたい方は「まとめ」へどうぞ。


【深掘り】なぜ2年で5倍になったのか——4つの原因

原因1:気候変動——干ばつと豪雨の連続パンチ

2023年後半、エルニーニョ現象による極端な高温と干ばつ が西アフリカを襲いました。カカオの実(ポッド)の成長が阻害され、生産量が急減しました。

続けて2023年、2024年の収穫期に豪雨 が襲来し、ブラックポッド病(カビによる腐敗)が蔓延してしまいます。

この真逆の気象による災害は、気候変動による降雨パターンの不安定化が原因とされており(Syngenta)、今後も繰り返される可能性があります。

原因2:カカオ豆膨化ウイルス病(CSSVD)

2024年にカカオの木を枯死させるウイルス病が蔓延しました。

ガーナの主要生産地域では、作付面積の81%がCSSVDの影響を受けた と報告されています(Confectionery News, 2024年3月)。

81%というのは、全滅に近い数字です。唯一の対策は感染した木を切り倒して植え替えることのため、カカオの木を入れ替える必要があります。

しかしながら、新しい木が実をつけるまで3〜5年かかるので、CSSVDの影響による生産量の減少を回復するには少なくとも3年はかかる計算になります。

原因3:投機マネーの参入

カカオ先物市場は原油や金に比べると規模が小さいです。

しかしながら、原因1と原因2によるカカオ豆の生産量の減少に目をつけたヘッジファンドが流入したことにより、価格が大きく動きました。

2024年は供給不安を見込んだ投機的な買いが価格を押し上げた。特に12月の再高騰は、ショートスクイーズ(空売りの踏み上げ)の影響も大きかったとされています。

原因4:老木と農家の高齢化

西アフリカのカカオ農園では、多くの木が樹齢25〜40年 に達しており、最盛期を過ぎた木が多くなっています。 農家の高齢化と若者離れも深刻で、さらにカカオ栽培は重労働なのに収入が低いため、次世代が継がないことも起きており、生産農家が減少しています。 また、ガーナでは違法な小規模金採掘(ガランプセイ)が深刻です。金の価格高騰を背景に、カカオ農地の上で金を掘るため、農地自体が物理的に失われています。10万エーカー以上の農地が破壊されたとされ、2023/24シーズンのガーナのカカオ生産量が目標比約40%減となった一因とされています(Al Jazeera)。

4つが同時に重なった

気候変動やウイルスの「突発的な事態」と、老木化や高齢化の「長年の構造的問題」——これらが全部同時にきてしまった——それが2年で5倍の正体です。


【深掘り】チョコ1枚の内訳——誰が儲けて、誰が取り残されるのか

ここからがこの記事の本題です。

板チョコ1枚、3年で75%の値上げ

大手メーカーの定番板チョコの値段を追ってみます。

時期明治ミルクチョコレートロッテ ガーナミルク
2022年120円120円
2023年130円130円
2024年前半145円150円
2024年後半168円170円
2025年夏〜208円210円

(いずれも50g・税抜参考小売価格。明治ロッテの値上げ情報より)

3年で約75%の値上げ をしています。

明治ミルクチョコレートとロッテ ガーナミルクチョコレート

ここ数年は内容量は50gのまま変わっていませんが、2007年までは75gで100円 でした(neage.jp)。グラム単価で比較すると約3倍以上の値上げになります。

板チョコ1枚の価格推移。明治ミルクチョコレートとロッテ ガーナミルクの価格が2022年の120円から2025年夏の約210円まで、3年で75%上昇

2026年バレンタインチョコの平均単価は1粒436円 で過去最高を更新(帝国データバンク)しました。

なぜここまで上がるのか

ここ数年のカカオの先物取引価格が5倍に高騰した事実があるため、チョコレートの値上げは、カカオ豆が高騰したためでは?と思うと思います。 しかしながら、それだけが原因ではありません。

値上げ要因影響
カカオ豆の高騰先物価格が2年で約5倍。最大の要因
カカオバター・マスの高騰加工品は豆以上に値上がり。板チョコはバターの使用量が多い
砂糖・乳原料の値上げチョコの原料はカカオだけではない
円安カカオ豆はドル建て取引。円安がコストをさらに増幅
包装資材・物流費紙・プラスチック・輸送コストも上昇

カカオの先物価格が5倍になったからといって、チョコの値段も5倍になるわけではありません。 カカオはチョコレートの原材料の一部(ミルクチョコの場合、最終価格に占めるカカオの比率は推定15〜20%程度)であり、砂糖・乳原料・包装なども含めた全体で価格が決まります。 メーカーはヘッジ (先物予約)で数ヶ月〜1年先の仕入れ価格を事前に固定しています。だから先物が急騰してもすぐには反映されない。逆に言えば、2024年の高値圏で予約した分がこれから使われる ため、先物が暴落した2026年現在でも、まだ値上げが続く可能性があります。

メーカーはまず自社で吸収しようとしますが、限界を超えると値上げに踏み切ります。

明治は2024年だけで2回(6月・10月)、さらに2025年6月にも値上げを実施しています(明治プレスリリース)。ロッテも同様のペースで値上げしています。

また、安定した価格での製品供給のため、メーカーはカカオバターの一部を代用脂(パーム油等)に置き換える という動きも出ています(東洋経済)。

農家の取り分は、40年で半分以下になった

さて、板チョコが120円 → 約210円に上がりましたが、この値上げ分は農家に届いているのでしょうか。

まず、農家の取り分がどう推移してきたかを見てみます。

時期農家の取り分出典
1980年代12〜16%UNCTAD(2015年)、Oxfam
2015年頃7%UNCTAD
2018年頃約6%Make Chocolate Fair
2020年6.6%WEF / Fairtrade
2020年ミルクチョコ7%、ダークチョコ11%FAO/BASIC共同研究

※ソースや算出方法により6〜11%と幅がありますが(ダークチョコはカカオ含有量が多いため農家の取り分が大きくなる)、長期的に縮小している 点はどの調査でも一致しています。

注目すべきは、40年かけて農家が受け取る割合が半減した上に、ここ数年ではチョコの値段が上がっても、農家の取り分の割合はそのままということです。120円の時代も210円の今も6〜7%で固定されているため、金額にすると約8〜14円——値上げで増えた分の大半は、ブランド・小売・流通(約70%)と中間の取引・加工に吸収されています。

しかも、FAO/BASIC研究(2020年)によると、ブランドと小売は売上の70%だけでなく、コストを差し引いた利益(マージン)ベースでは約90% を占めています。 取引・加工側は売上の23%を受け取っても、設備投資や輸送コストで利益は薄くなります。 9社のトレーダー・加工業者が世界のカカオ取引の75%を占める寡占構造が、この偏りの背景にあります。

じゃあ高騰で農家は儲かった?——むしろ減っている

Oxfamの調査(2023年)では、ガーナのカカオ農家400人以上を対象にした結果、2020年以降の純収入は平均16%減少 。女性農家に限ると22%の減少でした(Oxfam)。

先物価格が5倍になっても、農家の手取りはむしろ減って います。ガーナのカカオ農家の平均年間生産量は約1トン。生活に必要な収入は年間2,600ドル以上とされていますが、現実には1日2ドル以下で生活する農家が大半です。

なぜでしょうか。

ガーナやコートジボワールでは、政府が農家への買取価格を設定 しています。先物市場でいくら値が上がっても、農家が受け取る額は政府が決めた固定価格のため、高騰の恩恵は、先物市場の投機筋や中間業者のマージンとして吸収される構造となっています。

だからこそ、1980年代に12〜16%あった農家の取り分が6〜7%に半減しても、構造は変わらないわけで、チョコが120円でも210円でも、農家の割合は固定されたままとなります。

この構造では、農家の取り分は少なく、次世代の後継ぎが少なくなるのもうなずけます。


【深掘り】7%を変える仕組み——フェアトレードとBean-to-Bar

高騰しても暴落しても7%が変わらない構造に対して、これを変えようとする仕組みもあります。

フェアトレードなら、農家の取り分はどう変わる?

その仕組みの一つがフェアトレードです。

途上国の生産者に「公正な価格」で取引することで、生活の改善と自立を支援する仕組みで、認証機関が最低価格やプレミアム(上乗せ金)を設定し、先物市場がどんなに下がっても農家の収入に対して、下限を保証します。

そのフェアトレード・インターナショナルが、2026年10月から新しい最低価格を導入します。

  • 最低価格: ガーナで3,500ドル/トン(従来比45% の引き上げ)
  • プレミアム: 275ドル/トンに増額
  • 新ルール: プレミアムの40%を農家に直接現金で支払うこと

Fairtrade

「直接現金で」というルールが重要です。通常のサプライチェーンでは農家と最終価格の間に何層もの中間業者がいて、お金が途中で薄まっていってしまいます。フェアトレードはこの「薄まり」を減らそうとしています。

フェアトレード認証品の場合、農家の取り分は通常の7%より多くなる想定です。消費者が多く払った分が農家に届く構造のため、フェアトレードチョコは通常より高い価格設定になりますが、先物市場がどんなに乱高下しても「最低価格」が保証される——これが農家にとっての安全ネットです。

Bean-to-Barなら?

先日の記事で紹介したMAROUのようなBean-to-Barメーカーは、さらに違うアプローチを取っています。

カカオ農家と直接取引(ダイレクトトレード)をするため、先物市場を介さない。中間マージンが圧縮されて、農家の取り分が大きくなる仕組みです。

MAROUはカカオの産地であるベトナムで直接製造する「オリジンメーカー」です。西アフリカのサプライチェーンとは異なるルートで、カカオの流通をしています。

Bean-to-Barのチョコレートは、産地ごとのカカオの個性——フルーティー、ナッツ感、スパイシーさ——がダイレクトに味に出ます。大量生産のチョコレートでは、複数産地のカカオをブレンドして均一な味に仕上げますが、Bean-to-Barはその逆。ワインのテロワールのように、産地や農園の違いを味わうのが醍醐味です。

「美味しいから選んでいたら、結果的に農家に届く金額も多かった」——それがBean-to-Barの面白いところです。

ただし世界的な高騰の波から完全に逃れるのは難しく、クラフトチョコレートも値上げが広がっています。

同じ「チョコ」でも、お金の流れが違う

ここまでを整理すると:

  • 通常のチョコ: 農家は約7%(200円なら約14円)。先物が5倍になっても変わらない
  • フェアトレード: 最低価格保証 + プレミアム + 直接現金ルール。農家の安全ネット
  • Bean-to-Bar: 中間マージンを圧縮。産地の味がダイレクトに届く

「構造を変えなきゃ」と気負う必要はなくて、単純に美味しいチョコを探していたら、フェアトレードやBean-to-Barに出会った——そんな入り口でいいと思います。結果としてお金の流れが変わるなら、それが一番自然です。


【現状】暴落、そして「カカオ離れ」

先物は約70%暴落した

2026年2月、カカオ先物価格は約3,700〜4,000ドル/トン まで下落しています。 2023年10月以来の安値圏で、最高値からの下落率は約70%となり、7週間連続で下落しました。

なお、2026年1月にはブルームバーグ商品指数(BCOM) にカカオが21年ぶりに再追加され、インデックス連動ファンドが市場全体のオープンインタレストの 56%に相当する カカオ先物を買い入れる必要が生じました(Barchart)。これが一時的に下落を緩和する要因となりましたが、供給過剰の圧力が勝り、下落が続いています。

要因詳細
供給過剰StoneXが2025/26年度に28.7万トン、翌年度も26.7万トンの供給過剰を予測
在庫増加世界カカオ在庫は前年比+4.2%の110万トン
需要減退欧州の加工量が12年ぶりの低水準。「カカオ離れ」が進行
産地の売れ残りコートジボワールで12〜13万トンのカカオ豆が未販売

暴落で苦しむのも、やっぱり農家

暴落を受け、国際トレーダーが高騰時の価格での購入を拒否したため、コートジボワールで12〜13万トンのカカオ豆が売れ残り、在庫が積み上がりました。

農家救済のために、コートジボワール政府はCCC(カカオ・コーヒー評議会)を通じて約5億ドル で10万トンの未販売カカオ豆を買い戻すと発表しています。

しかし、この買い戻しで政府の財政負担は膨らんでしまいました。

政府は、これ以上の在庫増を防ぐため、2月末には政府が設定する農家への買取価格自体を大幅に引き下げるという苦渋の決断をせざるを得ず、ミッドクロップ(中間収穫期)の開始も史上初めて前倒しされました。

高騰時は政府の固定価格のせいで恩恵が届かず、暴落時はその固定価格が引き下げられる——結果として、農家にとって不利な構造となっています。

高騰で苦しんだのは(メーカーと)消費者、暴落で苦しんでいるのは(産地政府と)農家——影響を一番受けるのは、サプライチェーンの端にいる生産者と消費者 です。

消費の変化と「ゼロカカオ」チョコの登場

チョコを取り巻く消費行動にも変化が見られます。

バレンタインに「渡す予定なし」と回答した女性は42.8%(前年比+4.0ポイント)(インテージ調査)。これが価格高騰の影響なのか、バレンタイン文化そのものの変化(義理チョコ離れなど)なのかは切り分けが難しいところです。

一方、メーカー側ではコスト対策としての動きが出ています。百貨店はノンチョコレート商品(焼き菓子・グミなど)を拡充し、カカオ由来原料を使わない 「ゼロカカオ」チョコ まで登場しました。不二製油の「アノザM」はキャロブ(イナゴマメ)・えんどう豆・植物油脂でミルクチョコレートの食感と口溶けを再現したもので(不二製油プレスリリース)、こちらはカカオ高騰が直接の背景です。

チョコが安くなるのは、まだ先——むしろまだ上がるかもしれない

先物が下がっても、小売価格に反映されるには半年〜1年以上のタイムラグ があります(日本経済新聞)。2026年1月時点のチョコレート物価は前年比 +24.4%

しかもこのタイムラグは「下がるのが遅い」だけではありません。メーカーが2024年の高値圏でヘッジ(先物予約)した分は、これから2026〜2027年の製品に反映されます。つまり、先物が暴落した今も、高値で仕入れたカカオがこれから使われる。現在の75%値上げは、先物5倍のピークを完全に織り込んだ数字ではない可能性がある。安くなる前に、もう一段の値上げが来てもおかしくありません。

そして、気候変動もCSSVDも老木問題も解決していない事実があります。今回の暴落は供給回復による一時的なもので、構造的なリスクは残ったままなのです。


まとめ

200円のチョコの行方を追ってみたら、農家に届くのは約14円(約7%)でした。1980年代は12〜16%だった農家の取り分は、40年で半分以下に縮小しています。

カカオ先物は2年で5倍に高騰し、その後約70%暴落しました。

しかしながら、2026年のバレンタインチョコの価格は1粒436円で過去最高となっています。先物価格が下がっても、チョコの価格(私たちの手元に届く価格)が安くなるのは早くて半年後——さらに、価格が高騰する要因も依然として秘めたままです。

そして、高騰でも暴落でも、農家の取り分はほとんど変わりません。

フェアトレードやBean-to-Barのように、この構造を変えようとする仕組みはあります。ただ、「農家のために買わなきゃ」と構える必要はないと思っています。産地ごとの個性が出るBean-to-Barのチョコは、純粋に美味しい。美味しいから選ぶ。それだけで、14円の行き先が少し変わる——そんな世界になったらいいなと思います。


参考情報

関連書籍

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