ラトビアのミトンを編んでみた!──伝統模様に挑戦した記録
【読了時間:約12分 / 要約のみなら3分】
この記事で分かること(3行まとめ)
- ラトビアミトンの編み込みは「2色の糸の管理」が最大の壁
- 伝統の極細糸ではなく「なまけ者の糸」で編むとハードルがぐっと下がる
- 文化を「知る」だけでなく「手を動かす」ことで見えるものがある
前回の記事でラトビアのミトン文化を深掘りしました。約1000年の歴史、太陽や生命の樹を編み込む伝統模様、花嫁が数百組を編む婚礼の風習──。
知れば知るほど、魅力的なラトビアミトン。ぜひ、編んでみたくなりますね!
というわけで、実際にラトビアの伝統模様でミトンを編んでみました。

結論:太めの糸なら、初めてでも編める
先に正直に言っておくと、ラトビアの伝統的な細い毛糸(1〜1.5mm棒針)では編んでいません。
前回の記事でも紹介した通り、伝統のミトンは極細毛糸で繊細に編まれるもの。でも、いきなりその細さに挑むのはハードルが高すぎます。
そこで選んだのが、中田早苗著 『ラトビアの手編みミトン』 のコラムで 「なまけ者の糸」 と紹介されている太めの毛糸です。(といっても、並太で日本では一般的な太さですが)伝統の極細糸に比べてゲージが大きいので、同じ模様でもざっくりと早く編めます。
「なまけ者」と言うと聞こえが悪いですが、太い糸で構造を理解してから細い糸に進む、というのは合理的なアプローチだと思ってます。
使用した材料と道具
毛糸
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 太さ | 並太 |
| 素材 | アクリル100% |
| 色 | ターコイズブルー(メイン)× オフホワイト(サブ) |
並太を選んだ理由は単純で、編み込み初心者でも目が見やすい から。棒針径で比べると、伝統の極細(約1.5mm)に対して5号針は3.6mmで約2.4倍。同じ模様でも面積は約6倍になるので、模様の構造がとても見やすい。ラトビアの伝統毛糸(中細〜極細)だと、模様の1目1目がとても小さくなります。太い糸なら編み目が大きいので、模様のどこを編んでいるか迷子になりにくい。
素材にアクリルを選んだのは、洗いやすさと縮みにくさを優先したためです。ただし、本来のラトビアミトンにはウールがおすすめ です。伝統的にミトンはストーブなど火の近くに置くこともあるもの。アクリルは熱に弱く、高温で溶けたり変形したりする危険があります。実用を考えるなら、ウール100%の毛糸を選ぶのがおすすめです。
道具
| 道具 | 詳細 |
|---|---|
| 棒針 | 5号・5本針 |
| とじ針 | 糸始末用 |
参考にした図案
以下の書籍を参考にしました。図案の著作権に配慮し、具体的なチャート図は掲載せず、書籍への参照としています。
- 『風工房のお気に入りCOLORS 復刻版』 風工房(日本ヴォーグ社)
- 『ラトビアの手編みミトン』 中田早苗(誠文堂新光社)
実際の編み方プロセス
ステップ1:作り目〜リブ編み
手首部分はターコイズブルー1色でゴム編み。今回はシンプルにリブ編みから模様編みに入りました。
ステップ2:編み込み模様(本体)
ここからが本番です。
ストランデッドニッティング(編み込み)では、2色の糸を同時に持ちながら編んでいきます。使う色を切り替えるたびに糸を持ち替えるので、普通のメリヤス編みとはまったく別の作業です。

つまづいたポイント①:糸の絡まり
編み込み最大の敵は 糸の絡まり です。
2色の糸を交互に使うたびに、糸球がくるくると回転して絡んでいきます。数段ごとに糸球をほどき直す作業が必要でした。
つまづいたポイント②:フロート(渡り糸)の管理
編み込み模様では、使っていない色の糸が編み地の裏側を渡ります。これを フロート と呼びます。
フロートが長すぎると、ミトンに手を通すときに指が引っかかります。5目以上色が続く場合は、途中でフロートを編みくるむ(巻き込む)処理が必要です。
つまづいたポイント③:ゲージ(編み目の大きさ)
編み込みをすると、普通の平編みよりも ゲージがきつくなる 傾向があります。裏側のフロートが編み地を引っ張るためです。
これは「なまけ者の糸」のメリットでもあって、太い糸なら多少きつくなっても全体のサイズへの影響がわかりやすい。極細糸だと微妙なゲージの違いが積み重なって、気づいたら手が入らない……なんてことになりかねません。
ステップ3:親指部分
親指部分は、別糸で目を休めておき、本体を編み終えた後に戻って編みます。
![]()
写真の黄緑色が別糸です。ここをあとで解くと親指の穴になります。親指の位置を間違えると左右非対称になるので、ここは慎重に。
ステップ4:先端の減らし目
ラトビアミトンの先端は 三角形に尖らせる のが伝統的なスタイルです。ピラミッド状に減らし目をすることで、独特のシルエットが生まれます。
完成!

| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| かかった時間 | 10〜12時間(1〜2日) |
| 難易度 | ★★★☆☆(中) |

今回は2色のシンプルな編み込みですが、編み込みの基本構造を学ぶには十分でした。
学んだこと・気づき
試作で学んだ「糸の渡し方」の重要性
実は、記事で紹介したミトンの前に試作を1組編んでいます。

試作では2色の糸の渡し方(どちらの糸を上にするか)をあまり意識しませんでした。結果、裏側が汚くなり、表の模様もぼんやりしてしまいました。
編み込みでは、2色の糸のどちらを上に渡すかで模様の見え方が変わります。
- ベース色が上・配色糸が下 → 模様がはっきり浮き出る
- ベース色が下・配色糸が上 → 模様がなじんで目立たない
参考書籍では後者(配色糸が上)で説明していることが多いのですが、模様をくっきり出したかったので、2組目では前者(ベース色が上)を意識して編みました。これだけで仕上がりがかなり変わります。
編み込み模様の難しさと楽しさ
正直に言うと、最初は大変でした。2色の糸を同時に扱うだけで頭が混乱するし、糸は絡まるし、渡り糸は引きつるし。
でも、模様が少しずつ浮かび上がってくる瞬間は格別です。1段ごとに「おっ、星の形が見えてきた」「ここで色が切り替わるのか」という発見があって、平編みとはまったく違う楽しさがあります。
次に入れたい技法:ラトビアンブレイド
今回のミトンには入れませんでしたが、ラトビアミトンにはリブ編みと模様編みの境目に ラトビアンブレイド を入れるのが伝統的です。2色の糸を交互に使い、裏編みの段で糸のねじる方向を変えることで、編み地に小さな三つ編み模様が浮かび上がる技法です。

リストウォーマーでは何度か編んだことがありますが、ミトンではまだ未挑戦。現在制作中の伝統版ミトンにはラトビアンブレイドを入れる予定です。
ラトビアンブレイド(キヒノヴィッツ編み)で猫用ウェアも編んでいます。
「なまけ者の糸」は悪くない
伝統からするとゲージが違うので「本物のラトビアミトン」とは呼べないかもしれません。でも、模様の構造を理解するには太い糸が最適でした。
ざっくりとした編み地には、繊細な伝統ミトンとはまた違う温かみがあります。普段使いするにはむしろこちらの方が扱いやすい。
なお、この「なまけ者の糸」で編んだラトビア風ミトンは megusunuLabのショップ で販売しています。
ラトビアの花嫁のすごさ
これを数百組、しかも全て違う柄で編んだラトビアの花嫁たち。改めてすごいなと思いました。1組編むだけでも相当な時間と集中力が必要です。前回の記事で紹介したNATOサミットで268人の編み手が4,500組を作ったという話も、その大変さが身をもってわかりました。
次は「本物」に挑戦中
現在、ラトビアの伝統に近い細さの毛糸(2号棒針)でのミトンを制作中です。なまけ者の糸で構造を理解したおかげで、細い糸でも模様の読み方に迷わなくなりました。

今度は2色ではなく多色(紺×白×赤×黄色)。なまけ者の糸版とは糸の細さも色数もまったく違います。完成したらこの記事に追記するか、続編として書くつもりです。
まとめ:文化を知り、手を動かすことで見えるもの
ラトビアのミトンを編んでみて、一番強く感じたのは「この模様には意味がある」ということの重みです。
防寒具としての機能はもちろんですが、太陽を編み込んで光と温もりを祈り、生命の樹で宇宙を表し、一組ずつ異なる願いを込める──その文化を知った上で編むミトンは、ただの手袋とは違うものになります。
まだ技術的には未熟ですが、ラトビアの伝統に少しだけ触れられた気がします。
よくある質問
ラトビアミトンを編むのに必要な道具は?
中細〜合太程度の毛糸(2色以上)、5本棒針または輪針が基本です。編み込み(ストランデッドニッティング)の経験があると取り組みやすいですが、初めてでも丁寧に進めれば編めます。今回のように太めの糸から始めるのもおすすめです。
ラトビアミトンの編み込みは難しい?
最大の壁は「2色の糸を同時に扱うこと」です。糸の絡まりや、編み地の裏側のフロート(渡り糸)の管理に慣れが必要です。最初は太めの糸で練習すると、模様の構造が理解しやすくなります。
初心者におすすめのラトビアミトンの本は?
日本語なら中田早苗著『増補改訂 ラトビアの手編みミトン』(誠文堂新光社)がおすすめです。歴史や技法の解説が充実しており、編み図もわかりやすいです。
ラトビアミトンを編むのにどのくらい時間がかかる?
編み込みの経験や模様の複雑さによりますが、片手で数日〜1週間程度が目安です。太めの糸なら細い糸より早く仕上がります。
参考情報
関連書籍
- 『風工房のお気に入りCOLORS 復刻版』 風工房(日本ヴォーグ社):今回の図案の参考にした書籍。編み込みミトンの配色パターンが豊富
- 『ラトビアの手編みミトン』 中田早苗(誠文堂新光社):ラトビア現地で入手したミトンのパターンと歴史を紹介。今回の参考にした書籍
- 『増補改訂 ラトビアの手編みミトン』 中田早苗(誠文堂新光社):上記の増補改訂版。新しいパターンが追加されている
- 『ラトビアの伝統模様で編むすてきなミトン』 Ieva Ozolina(ブティック社):50デザインのミトン掲載、全て編み方図付き
- 『Latvian Mittens: Traditional Designs & Techniques』 Lizbeth Upitis(Schoolhouse Press):92組のカラー写真と125の編み図。英語・ラトビア語併記のラトビアミトン決定版